相続人に相続が発生したら
相続人に相続が発生したら--複雑なケース
相続人に相続が発生した場合、
- 相続人として登記手続きを行うのは誰なのか
- 必要な書類はどうなるのか
という問題です。
想定される場合というと、
①登記名義人が、依頼人の “おじいさん” のままになっている場合
②お父さんの相続手続き未了の間に、相続人たるご兄弟(叔父・叔母)が亡くなられ
て、そのご兄弟に子供(いとこ)がいる場合
等が考えられます。
1.相続人として登記手続きを行うのは誰なのか
上記の①登記名義人が、依頼人の “おじいさん” のままになっている場合、で考えてみましょう。
例えば、下記のような家系図の場合
登記名義人 祖父Aの相続登記です。
祖父AはH1年1月1日に死亡していますが、その時点では祖父Aの子供二人(父Cと叔父G)が存命ですので、父Cと叔父Gが祖父Aの相続人でした。
しかし、相続登記手続きをしないまま、父Cと叔父Gも死亡しました。
その結果、父Cの有する「祖父Aの相続権」を、母D・依頼人E・弟Fが相続し、
同様に叔父Gの有する「祖父Aの相続権」を、いとこI・いとこJが相続した(配偶者Hは叔父Gよりも先に死亡しており、叔父Gの相続人ではありません)、ということになります。
すなわち、現時点においては、祖父Aの相続登記手続きを行う当事者は、
母D・依頼人E・弟F・いとこI・いとこJの5名ということです。
また、祖父Aの相続に関する法定相続分は、
母D 1/4(父Cの法定相続分1/2の、1/2)
依頼人E 1/8(父Cの法定相続分1/2の、1/4)
弟F 1/8(父Cの法定相続分1/2の、1/4)
いとこI 1/4(叔父Gの法定相続分1/2の、1/2)
いとこJ 1/4(叔父Gの法定相続分1/2の、1/2)
になります。
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上記の例では、おじいさん名義の相続登記でも大したことはないかもしれません。
しかし、父Cの兄弟が大勢いると、いとこの数もかなりの数になります。
あるいは、兄弟の中に結婚はしているが子供がいない人がいた場合には、場合によっては、その兄弟の配偶者の親族にまで相続権が広がっていく可能性もあります。「相続権を相続する」ということから生じる現象です。
2.必要な書類はどうなるのか
上記の家系図の場合で考えてみましょう。
- 被相続人 祖父Aの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- (亡)父Cの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- (亡)叔父Gの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- 祖父Aの住民票の徐票(死亡の旨の記載のあるもの)又は戸籍の附票
- 母D・依頼人E・弟F・いとこI・いとこJの戸籍謄本、住民票、印鑑証明書
などです。
問題は、1.2.3.の「出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本」が非常に多数になるという点と、その保存期間が経過してしまっていないかという点、さらに、4.の保存期間も気になるところです。
父Cの兄弟が大勢いると、必要な戸籍も膨大になります。また、上記の兄弟の配偶者の親族にまで相続権が広がっていく場合など、さらに複雑な相続手続きの場合には、際限なく戸籍を集めなければならないこともありえます。
※兄弟が法定相続人の場合
実は、兄弟が法定相続人の場合、単純なケースでも、戸籍の数が多くなります。
上記の家系図で、被相続人Aの相続登記に必要な戸籍関係は、下記のとおりです。
- 被相続人Aの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- 父Eの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- 母Fの出生から死亡までのつながりのつく戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- 相続人B・C・Dの戸籍謄本
父Eと母Fの出生から死亡までのつながりのつく戸籍等が必要な理由は、
父E・母Fそれぞれに、ほかに子供がいないかどうかを確認する必要があるからです。つまり、いわゆる、腹違いの兄弟・種違いの兄弟の存否です。これを確認するには、父E・母Fの出生から死亡までのつながりのつく戸籍等を集めるしかないのです。
したがって、兄弟が相続人の場合には、戸籍の量は必然的に増えます。ほったらかしの相続に、この兄弟の相続がからむと、いっそう大変です。
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